「オペラと芸術」~日本に根付いてほしいオペラ芸術~

「オペラと芸術」~日本に根付いてほしいオペラ芸術~

講師 丸山 幸子

大阪倶楽部に於ける丸山幸子 講演(要約)

2006年4月14日

日本のオペラ上演や歌手の活躍は約100年の歴史があり、戦前でもヨーロッパに留学し、日本にオペラやクラシック音楽を普及しようと帰国し活躍した日本人演奏家も多くいた。当然クラシック・オペラ愛好者は明治や大正の時代からもいた。戦後徐々に音楽を楽しむ環境が整う中で、現在のようなクラシック・オペラファンが増えたきっかけを作った要因は、NHKがイタリア歌劇団招聘文化事業を1956年から1976年まで20年間計8回行ったことが挙げられる。意義と功績は計り知れない。多くのファンが熱狂しまたファンを生み、音楽芸術でそれらの人々に生涯の心の支えを齎した。しかしながらオペラ上演回数やファン層の広がりまでの歩みは、現在のように日本でオペラが頻繁に上演されるようになったのがほんの数十年であることから鑑みれば多難であったことが窺い知れる。

芸術作品が表現する美の意味と精神に作用する力とは何か。芸術は、時を超えてもさまざまな美で、そして幅広い層の人々の精神を魅了する普遍不朽性がある。その普遍不朽性について。芸術が心の支えに、生き甲斐になるとはどういうことなのか。そしてギリシャの芸術・文化が与えた影響力とルネッサンス運動。教会音楽とキリスト教文化の支配。オペラ誕生の過程と400年のオペラ文化の歴史。オペラと他の芸術と文化の連鎖などに言及する。

オペラは物語なくして成り立たない。その物語は古代から現在のドラマであっても、必ず歴史背景とその時代の社会と人間の感情を映し出している。オペラは音楽と歌手の声を楽しむだけでも素晴らしいが、扱われる背景は多種多様であるので、それらを掘り下げて調べると知的連鎖を楽しむことができる。

オペラだけでなく、芸術作品に初めて触れる体験は人生に大きな光を感じることだが、その体験は重ねるほど深まる。どのような芸術作品でも繰り返し深く鑑賞することで、その作品の深い芸術性が見え精神に作用し感動は深まっていく。 芸術とは何か、心の支えになる美的なものを得ることの豊さ、知的好奇心を得る喜び、オペラの深さと広さなどを話したが、ともかく聴いてほしい。今、日本でオペラを楽しむことはかなりできる。CD等で何度も聴き、生の舞台やDVDで見る鑑賞を重ねてほしいとお願いした。

(大阪市を中心とした企業や病院、学校関係者など約120名近い参加者であった。)